宋代の女性の服装は、唐代のような華やかさはないものの、その控えめな美しさに人々は惹きつけられます。保守的でありながらも、洗練されたデザインは、当時の社会背景と深く結びついていました。今回は、そんな宋代の女性ファッションの魅力に迫ります!
一.保守的な美しさの秘密
1. なぜ保守的になったのか?
宋王朝は、趙匡胤によって建国されましたが、その後の内憂外患により、王朝は南へ逃れ、南宋を建国することになります。このような不安定な時代において、支配者たちは思想統制を強化し、人々の美意識にも影響を与えました。
程朱理学が台頭し、社会全体が保守的な方向へと向かう中で、服装も簡素で控えめなものが好まれるようになりました。特に女性の服装は、質素で理性的、上品で淡白な美しさが求められたのです。
2. スタイルの中の美しさ
宋代の女性の服装は、「窄(狭い)」ことが美徳とされました。スリムなシルエットが流行し、窄袖衣(狭い袖の服)が人気を集めました。宋詞には、女性の痩せた腰や細身の姿を称える表現が多く見られます。
宋代の女性の服装は、大きく分けて24種類あり、それぞれに特徴があります。例えば、襦裙(じゅくん)は、短い上着「襦」とスカート「裙」の組み合わせで、腰帯で結んで着用します。「裙」には、様々な種類があり、色や素材、模様などが異なりました。
褙子(はいし)は、宋代の女性の服装において重要なアイテムで、身分に関係なく着用されました。対襟(左右対称に開いた襟)のものが多く、襦裙や衫(さん)の上に羽織る外衣として用いられました。褙子は、女性の美しいシルエットを引き立てるために、脇の下が開いているデザインが特徴です。
また、宋代には围腰(ウェイヤオ)と呼ばれるエプロンのようなものも存在しました。これは、スカートやズボンの上に着用し、衣服の汚れを防ぐ役割を果たしました。一方、蔽膝(へいしつ)は、元々は腰から膝までを覆う布でしたが、宋代には貴族の礼服の装飾品として用いられるようになりました。
宋代の女性は、ズボンも着用していました。开裆裤(かいとうこ)は、スカートの下に履くぴったりとしたズボンで、主に上流階級の女性が着用しました。和裆裤(わとうこ)は、ゆったりとしたシルエットで、労働者階級の女性が着用することが多かったようです。大口裙裤(だいこうくんこ)は、スカートのようなシルエットのズボンで、動きやすく、宋代の女性に人気がありました。
宋代の女性は、袄(おう)と呼ばれる綿入りの上着を着用していました。これは、現代の綿入れのジャケットのようなもので、防寒のために用いられました。また、衫(さん)は、上流階級の女性は羅衫(らさん)、労働者階級の女性は布衫(ふさん)を着用しました。
3. 花柄と色彩の美しさ
宋代の女性の服装には、様々な花柄が用いられました。刺繍や織物で表現された花柄は、生き生きとしており、宋代の高度な技術を物語っています。江西省徳安県の周氏墓からは、折枝花紋(せっしかもん)、牡丹紋(ぼたんもん)など、様々な花柄が発見されています。
牡丹は、中国古代において富と美の象徴であり、宋代の女性の服装にも多く用いられました。芙蓉(ふよう)も、牡丹と同様に富と美を象徴する花であり、牡丹と組み合わせて用いられることもありました。梅(うめ)や竹(たけ)は、清廉潔白な美しさを表現し、宋代の女性の服装に、静かで上品な印象を与えました。また、鳥の模様も、花柄と組み合わせて用いられ、縁起の良い意味合いを込められました。
宋代の女性の服装の色は、唐代の黄色や赤色を受け継いでいました。特に黄色は人気があり、宋詞には「春衫是柳黄(春の衫は柳の黄色)」など、黄色の服を称える表現が見られます。
二.端正な美意識
宋代の女性の服装は、時代の影響を受けて、控えめで保守的なスタイルへと変化しました。その背景には、当時の男性の美意識が深く関わっていました。宋代の社会は、程朱理学の影響を受け、感情を抑え、内面的な精神性を重視する傾向がありました。そのため、女性の服装も、華やかさよりも、落ち着きと品格を重視するようになったのです。
三.後世への影響
宋代の服装は、中国封建社会の服装文化において、華やかさから質素さへと移行する転換点となりました。程朱理学に基づく服装の美学は、後世の王朝にも大きな影響を与え、封建的な統治と倫理を維持するための手段として用いられました。宋代の美学は、服装だけでなく、陶磁器や家具など、様々な芸術分野にも反映されています。
四.まとめ
宋代の女性の服装は、唐代のような華やかさはないものの、その控えめな美しさは、中国古代の服装文化における重要な宝です。宋代の女性の服装は、時代背景や社会情勢の影響を受けながらも、独自のスタイル、模様、色彩を生み出し、後世の美意識に大きな影響を与えました。
宋代の女性ファッションは、質素でありながらも、奥ゆかしい美しさを秘めています。その魅力を知れば、まるでタイムスリップしたかのような気分を味わえるでしょう。