射雕英雄伝に登場する石彦明という人物をご存知でしょうか？郭靖と黄蓉が牛家村の密室で療養していた際、曲霊風と共に死んでいた男です。
物語にはこうあります。「黄蓉が突然『あっ』と声を上げた。地面にはきちんと一体の骸骨が仰向けに横たわっており、衣服は朽ち果てていた。東側の部屋の隅にはもう一体の骸骨があり、大きな鉄の箱に伏せており、長い鋭いナイフが肋骨の間を貫通し、鉄の箱の蓋に突き刺さっていた。」
一体は曲霊風、もう一体が石彦明です。
石彦明は官府の人間で、曲霊風が皇宮の書画や宝物を盗んだため、単身で追跡し、ここで曲霊風と争ったのです。
郭靖の言葉を借りれば、「この男は鉄の箱を開けようとして、背後から襲われ、ナイフで刺し殺されたようだ。地面の男は肋骨が二列とも折れており、掌の力で殺されたようだ。」
曲霊風は石彦明の掌力によって倒されました。武器に頼らず、功力だけで彼を上回っていたのです。しかし、江湖の経験が浅く、曲霊風の仮死の計略に引っかかり、鉄の箱を開けるために背を向けたところを、曲霊風に背後からナイフで刺し殺されたのです。
曲霊風は東邪・黄薬師の弟子の中で最も武功が強く、石彦明との正面からの戦いでも敵ではありませんでした。
二人の骸骨の状態から見て、死亡時期は10年以上前、丘処機が初めて郭嘯天と楊鉄心に出会った頃だと思われます。
18年前の丘処機の武功はまだ完成しておらず、曲霊風と同程度だったはずです。したがって、当時の石彦明の実力は丘処機を下回らなかったと推測できます。
このような実力者が江湖で全く知られていないのは、一体誰に師事したのかも不明です。公務中の殉職で、犯人逮捕の途中で命を落としました。
もし石彦明が江湖を歩んでいれば、いずれは五絶に匹敵する存在になっていたかもしれません。しかし、官府は優秀な役人を失い、江湖は類まれなる達人を失ったのです。
