「黄龍府」は現在の中国・吉林省長春市農安県にあった古城。遼・金時代には北方の軍事上の要衝であり、東北地方の南北交通の要でした。松花江に面し、兵家必争の地でした。
1140年（南宋・紹興10年）、岳飛は金軍への北伐の際、部下たちにこう言いました。「今こそ金人を討ち、黄龍府を直撃し、皆と共に痛飲しよう！」これはあくまでスローガンであり、将兵たちは士気を高めるためのものだと理解していました。
しかし、わずか2年後の1142年、岳飛は風波亭で暗殺され、長男の岳雲と娘婿の張憲も共に処刑されました。岳雲はわずか23歳でした。
もし岳飛が暗殺されず、高宗・趙構が秦檜の和議の意見を聞き入れず、岳飛を信任し、北伐を継続させていたとしたら、岳家軍は本当に北上し、幽雲十六州を越え、黄龍府を陥落させることができたのでしょうか？
答えは：可能性は低いでしょう。なぜでしょうか？
1140年、岳飛が北伐を率いた際、計画がありました。彼は北方の金軍内部の不和に乗じて、鄂州を出発し、まず中原を回復し、中原を固めた後、迅速に北進し、燕京を奪還するというものでした。
1.統治基盤が不安定で、長期的な大規模戦争の条件がありませんでした。南宋時代、底辺の農民に対する搾取は深刻で、農民蜂起が頻発していました。岳飛自身も農民蜂起を鎮圧したことがあります。趙構が岳飛を支持するには、経済的、人的な支援が必要でしたが、南方の民心が不安定な状況では、誰が趙構のために力を尽くすでしょうか？
2.北代地域の変化。当初、岳飛が戦っていたのは金兀朮の軍隊と北斉の軍隊であり、比較的戦いやすかったのです。北方の民衆の基盤も岳飛の軍隊に向いていました。しかし、さらに北上し、金国の領土に入ると、主力軍は金軍になります。金軍の力は北斉よりもはるかに大きく、北方の人材と物資を結集し、強力な軍隊を組織して金国の領土を守ることができました。
3.金兀朮が江南で敗れたのは、主に北方人が南方の地理や気候に慣れていなかったからです。特に水戦は、経験も戦闘の基礎訓練も全くなく、南方の水軍には全く歯が立ちませんでした。しかし、北方に行けば、食糧は十分で、騎兵の優位性が際立ちます。一方、南方の岳飛の軍隊は歩兵が主体であり、北方に行けば、食糧の供給が大きな問題となります。また、南方の兵士が主体の岳家軍は、北方でも現地の地理や気候に慣れていませんでした。
