小説『三国演義』では、諸葛亮は神のような人物として描かれています。彼の謎めいた行動には、興味深い秘密が隠されているかもしれません。
今回は、諸葛亮が臨終の際に「龐徳公、助けて！」と叫んだ理由と、死後に口に米七粒を入れたという奇妙な行動について探っていきましょう。
西暦234年、諸葛亮は自身の死期が近いことを悟りました。夜空を見上げると、自分の運命を象徴する星が弱々しく輝いているのを見たのです。
現代の科学知識があれば、星の光は何万年も前に発せられたものであると理解できます。しかし、当時の人々はそれを知りません。諸葛亮は、それが自身の寿命が尽き、先祖の霊廟へ旅立つ兆しだと感じたのです。
周囲の強い要望を受け、諸葛亮は天命に逆らい、運命を改めることを決意します。彼は誰にも陣幕に近づくことを禁じ、左手に黒旗、右手に剣を持ち、陣を敷いて延命を試みました。
延命の儀式が佳境に入ろうとしたその時、運命のいたずらか、魏延が突如として陣幕に乱入してきたのです。彼の突風のような勢いで、諸葛亮が延命のために灯していた灯が吹き消されてしまいました。これにより、諸葛亮の偉大な延命計画は頓挫してしまったのです。
諸葛亮は激しく喀血し、意識を失いかけました。そして、朦朧とする意識の中で「龐徳公、助けて！」と叫んだのです。
弟子の姜維は彼のそばにいましたが、過ちを犯した魏延もその場を離れることができませんでした。しかし、彼らは「龐徳公」という名前に聞き覚えがなく、誰のことなのか見当もつきませんでした。
実は、龐徳公は諸葛亮が南陽で隠遁生活を送っていた頃の師であり、友人でもあった人物だと言われています。
彼の正体については諸説ありますが、諸葛亮の親戚の長老である可能性が高いです。一説には、彼は諸葛亮の二番目の姉の夫の父親であり、また別の説では、諸葛亮は彼の弟子だったとも言われています。諸葛亮が持つ様々な術や能力は、すべてこの龐徳公から伝授されたものだというのです。
もしそうだとすれば、龐徳公は三国時代における最大の隠れたボスと言えるかもしれません。彼が立ち上がれば、曹操を滅ぼし、孫権を降伏させることも容易だったでしょう。しかし、彼は伝説としてのみ語り継がれ、その姿を現すことはありませんでした。
この話は、劉表が関係しています。劉表は荊州を支配しており、当然のことながら、荊州に身を置く龐徳公の才能を知っていました。彼は龐徳公を自分のチームに引き入れようと躍起になりました。
しかし、龐徳公は自由を愛する隠遁者であり、地位や名誉に縛られることを嫌いました。彼は断固として出仕を拒否したのです。
そこで劉表は、奥の手を使うことにしました。「家から離れたくないのか？ならば、住む場所をなくしてやる」と。
劉表は彼の家に火を放ったのです。しかし、龐徳公はそれでも出てきませんでした。家臣たちが遺体を探しに中に入ると、龐徳公はベッドの上でぐっすり眠っていました。外部の騒音など全く気にせず、深い眠りについていたのです。
弟子の諸葛亮が近づいてよく見ると、龐徳公は突然笑い出し、口から七粒の米を吐き出して姿を消したと言われています。
その後、この延命の秘術を、龐徳公は甥の龐統ではなく、諸葛亮に教えたのです。
そのため、魏延に延命を妨害された後も、諸葛亮には最後の手段が残されていました。それが、龐徳公から教わった米を使った延命法だったのです。
諸葛亮は、口に七粒の米を含み、足元に明かりを灯して儀式を始めました。七日以内に将星が落ちなければ、魂斗羅のように新たな命を借りて、十年間の寿命を得ることができるはずでした。
しかし、天は諸葛亮の死を望んでいたのでしょう。どんな秘術も効果はありませんでした。敵の絶え間ない妨害により、孔明の口には六粒の米が残りましたが、一粒が揺れによって落ちてしまったのです。その結果、諸葛亮は五丈原で星になったと言われています。
もちろん、これらはあくまで『三国演義』の物語であり、史実ではありません。歴史上の龐徳公は、鳳雛先生こと龐統の叔父にあたります。
彼は確かに名誉欲がなく、諸葛亮を可愛がり、様々な能力を教えたと言われています。しかし、彼が法術を使ったというのは単なる冗談であり、創作に過ぎません。
