中国には様々な民間信仰があり、土地神、玉皇大帝、龍王などの神話に登場する神々だけでなく、神格化された実在の人物も崇拝されています。例えば、ヤクザは関羽、盗掘者は曹操、遊郭は呂洞賓を崇拝しています。では、なぜこれらの有名な歴史上の人物と、全く関係のない職業が結びついているのでしょうか?
ヤクザが関羽を崇拝する理由
ヤクザが関羽を崇拝するのは、彼の武力ではなく、忠義を重んじているからです。建安5年(200年)、劉備と関羽は曹操との戦いで離散し、関羽はやむなく曹操に降伏しました。曹操は関羽を引き込もうと手厚くもてなしましたが、関羽は劉備の居場所を知るとすぐに彼の元へ駆けつけました。この時、「五関を過ぎ、六将を斬る」という伝説が残されています。
ヤクザは地下組織として、普段から騒ぎを起こしてばかりいます。そんな中で、もし仲間の兄弟が頼りにならなければ、生き残ることは難しいでしょう。彼らが関羽を崇拝するのは、「忠義」の精神的シンボルを確立するためなのです。
盗掘者が曹操を崇拝する理由
中国古代では手厚い埋葬が流行しており、特に漢王朝ではその傾向が顕著でした。曹操は兵を起こした当初、軍資金が不足していたため、漢の墓に目をつけました。曹操は発丘中郎将や摸金校尉などの役職を設け、墓を盗掘して軍資金を補填する専門の役人としたのです。
陳琳は『袁紹のために豫州を檄す』の中で、「曹操はまた、特に発丘中郎将、摸金校尉を置き、通過する所は破壊され、骸骨が露わにならないものはない」と書いています。
つまり、盗掘という職業は、曹操の手によって「発展」したと言えるでしょう。盗掘業者の後継者が曹操を崇拝するのも無理はありません。
宦官が岳飛を崇拝する理由
宦官と岳飛を結びつけるのは理解できない人もいるかもしれません。岳飛は愛国心の強い名将ですが、なぜ宦官と関係があるのでしょうか?実は、宦官が出世するための唯一の道は、皇帝に取り入ることでした。岳飛のイメージは歴史的に忠義を象徴しており、宦官が岳飛を崇拝するのは、皇帝に忠誠心を示すためだったのです。
次第に、宦官が岳飛を崇拝することは不文律となり、崇拝しない者は忠義心がないと陰口を叩かれるようになりました。そして、様々な理屈が生まれていきましたが、これはあくまで表面的なものであり、歴史上、宦官が政治を混乱させた例は数えきれません。「精忠報国」の精神を真に理解していた者はごくわずかでした。
遊郭が呂洞賓を崇拝する理由
呂洞賓は神話上の人物であると同時に、実在の歴史上の人物でもあります。しかし、現在では呂洞賓の神話的なイメージと歴史的なイメージはほぼ混ざり合っています。呂洞賓は人々から好色な人物として認識されており、妖怪を退治するだけでなく、暇な時には遊郭で花酒を飲むこともあったため、「三戯名妓白牡丹」などの物語が数多く伝えられています。呂洞賓は「色仙」という異名まで持っていました。
もちろん、神仙であり、道教全真派の祖師でもある呂洞賓は、花酒を飲む際に、迷える女性たちを教化し、人生の道を見つける手助けをすることも忘れませんでした。そのため、呂洞賓は遊郭の女性たちから最も尊敬される存在でした。彼女たちは呂洞賓を祀り、人生の方向性を示してくれることを願っていたのです。つまり、彼女たちが呂洞賓を崇拝するのは、自由への精神的な拠り所を求めていたからなのです。